癒着性腸閉塞とは?
腹部の手術を受けると、腸と腹壁、腸同士の炎症による癒着(腹膜の結合組織性癒着)が起こります。
これが軽度の場合には、生活上特に問題が起こる事は無いのですが、癒着が酷い場合、そこに引っ張られて腸が折れ曲がったり圧迫されて腸が詰まる事があります。
これが「癒着性腸閉塞」です。
→開腹手術の方が起こる確率が高いですが、腹腔鏡手術でも起こる事があります。私が以前、診させていただいた患者さんの中には、卵巣嚢腫の腹腔鏡手術の後に、癒着が起こり長時間歩く事が出来なくなってしまった方がいらっしゃいました。
この詰まりによって、便や腸内のガスが溜まってパンパンにお腹が張り、痛み・吐き気・歩行困難・起き上がり時の痛みなどの運動痛が起こります。
しかし、この癒着を剥がすために開腹手術をすると、また「新たな癒着」を引き起こし、悪化した場合には、腸閉塞を起こしてしまう可能性があるので、その危険性を鑑みて、余程の事が無い限り病院では、癒着を剥がすための外科手術は行われないようです。
「手術後」においては病院では癒着に対する積極的な対処法がない!
手術中であれば、手術した場所を「癒着防止シート」という吸収性の布状シートで覆って、他の臓器と物理的に分離するという方法があります。
→その後、シートはゼリー状になって、1ヶ月ほどで体内に生体に吸収されます。
しかし手術後には(知り合いの外科のお医者さんに聞いたお話ですが)「術後は、出来るだけ早期に離床を勧め、腸管の蠕動運動を促すくらいで、西洋医学的には、術後のこういった痛みに対しての”積極的な対処法”は、まだ無い。」という事でした・・・。
そこで「癒着を剥がす鍼」の出番という事です。
癒着性腸閉塞の症状
①腹部の違和感、腹部膨満感
②食欲不振
→腸管の蠕動運動障害のために、消化に時間がかかったり一度にたくさん食べられなくなります。
③お腹の痛み・吐き気
④歩行困難・起き上がり時の痛みなどの運動痛
⑤検査時の痛み(大腸内視鏡検査など)
→腸管の癒着によって内視鏡の動きが制限され、挿入が困難になるためです。
※癒着が進行していって、最も重度の場合には「腸閉塞」を引き起こし、緊急の処置が必要になる事があります。
癒着性腸閉塞の特徴
その特徴として、虫垂炎の手術や胃・十二指腸潰瘍の手術、婦人科疾患の手術後に多く見られます。
また「精神的なストレスによって悪化」する事が多いようです。
開腹手術をしなくても腸管癒着症を起こす場合がある!
開腹手術以外でも腸管癒着症に似た症状が起こる事があるようです。
①虫垂炎に対して抗生剤と使って治療した場合
②胆石や胆嚢炎がある場合
③腹膜結核
④婦人科疾患がある場合
⑤腹部の強い打撲や外傷
このような場合に炎症部分の周囲に癒着が起こりやすくなります。
手術後の癒着と不妊について
腹部の癒着が不妊の原因の1つになることがあるようです。
その原因として「骨盤内での組織の癒着」が挙げられます。
癒着により卵管が腹膜にくっついたり、卵管がふさがって卵子が通過できなくなるためではないかと言われています。
食事に関する注意事項
①まず、一度にたくさん食べ過ぎないことが重要です。なぜなら癒着によって腸の蠕動運動に制限がかかってしまってしまい、一度に通過できる食物の量も、手術前と比較して減少してしまうからです。
②食物繊維が多いもの(海藻、キノコ類、イモ類)や肉など脂っこいものは避けるようにします。
食事における対策
①一度に食べる量を少量にして複数回に分けて食べるようにします。腸に対する負担をなるべく減らすようにします。
②消化がよく、鉄分やミネラルを多く含んだ食事を摂りましょう。
③腸の蠕動運動を促すために、白湯などで多めの水分摂取を心掛ける。
④腹痛や嘔吐等の症状がある時は、1食絶食します。(無理に食べない。)
⑤便秘薬あるいは漢方薬(大建中湯など)を調節しながら飲むようにします。
癒着する場所
腸管と腸管、あるいは腸管と腹膜(ふくまく)や大網(たいもう)が癒着します。
組織としては腸管の最も外側をおおっている漿膜(しょうまく)と言う部分で癒着が起こります。
腸の癒着に効果的な漢方薬
大建中湯(だいけんちゅうとう)
→「山椒(サンショウ)・朝鮮ニンジン・乾姜・膠飴」が含まれており、お腹や腰を温め、消化管や腸管の血行を良くし蠕動運動を促す働きを持っています。腸閉塞の予防にも効果があります。
※腸の癒着を起こしている患者さんは、お腹の冷えが起こりやすいため、一般のセンナを含む便秘薬では強すぎる場合があるため、注意が必要です。
桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
→大建中湯の作用が強すぎる場合、こちらを併用すると効き目がマイルドになります。